名古屋高等裁判所 昭和25年(う)2238号・昭25年(う)2239号 判決
の賍物たる知情の点を調査する為め被告人朴鉄洙を証人として宣誓の上取調べたこと並右取調に際し審理を分離せずして之を為したことが明かであるが、翻つて原審第二回公判調書の記載に依ると、右知情の点に就ては被告人両名共之を争つて居ることが明認せられる。斯る関係の下に於て、相被告人を無条件で証人として尋問することが果して適法なりや否やに就て考察するに、刑事訴訟法第三百十一条第一項に依れば「被告人は終始沈黙し、又は個々の質問に対し供述を拒むことができる」と規定せられてあつて、この事は被告人の権利を保護せんとする新刑事訴訟法根本の精神なのである。然るに証人として尋問を受ける場合には、宣誓の趣旨に則り真実告白の義務を負担するのであるから前記法条に於て保障した被告人の権利は根本的に蹂躙せられることとなり、茲に甚だしい矛盾を招来するに至るであろう。或は証人となる被告人にとつて全然利害関係の無い事項であるか又は事件を分離して利害関係を全然滅却した場合ならば格別、同一審理の下に於て、而も被告人に於て争つている事項に就て、之を証人として宣誓の上尋問し、真実の供述を強要することは到底法の許容しないところであると謂わなければならない。然るに原審は敢て右の手続を採つたばかりでは無く、原判決書の記載に依れば右被告人朴鉄洙の証言を引用して被告人金乙の罪証としたことが明であるから右は判決に影響すべき訴訟手続の違背があると謂うの外は無い。
銃砲等所持禁止令第二条に依れば、同法第一条違反の所為に就ては懲役若しくは禁錮又は五千円以下の罰金の選択刑となつているのであるが原判決書の記載に依れば、原審は被告人朴鉄洙の銃器所持の点に就き懲役又は罰金の中何れの刑を選択したのか明でない。尤も刑法第四十七条、 第十条を適用せずして同法第四十八条を適用した関係から看れば、罰金刑を選択したものであることは推認することができないでも無いが、然し選択刑の如何は判決に影響すべき重要な点であるから須く之を明記し疑問の余地なからしめることが必要である。即ち此点に於て原判決は理由を附しない違法がある。